駐車待ちの車が通りに列を作っている。

私がうまく停められないせいで、
みんながイライラしているのがわかる。


「トーコさん、いいよ。
DVDは今度にしよう。」


ケイタにそう言われて、
レンタルショップをあとにした。



しばらく車を走らせたけれど、
行く宛てはない。


「トーコさん・・・
なんか飲まない?

あの辺に停まろうよ。」



そこは住宅街の中ほどで
お店などはなかった。


バス道にはさまれた
公園に自動販売機の明かりが見える。


公園の端のほうで
路肩に寄せて車を停めた。




「何飲む?あったかいコーヒーでいい?」


鞄から財布を探す間に
ケイタはもうポケットの中の小銭を
自動販売機に入れて
ボタンを押していた。



「あそこに座ろう?」



コーヒーを2本持って
街灯の下のベンチを指差す。


「公園のベンチに座るなんてこと・・・
10年くらいしてないわよ?」


「へぇ~、そう?」



改めて思う。
大人になると、
公園のベンチにも座らなくなる。