【、】




「…………?」


今、何か聞こえた?



後ろを振り返る。
そこは相変わらず人気の無い駅前。誰もいない。

なんだ、気のせいか。
そう判断した時、





【……豊花ちゃん………。】



「っ!!」


違う、気のせいじゃない。
今確かに呼ばれた。私の名前を。


よくよく考えればその得体の知れない声は、

目の前の、フェンスの向こうから聞こえた気がする。



「誰……っ?」


狼狽えた。

だってその声は、頭の中にするりと直撃してくる気持ち悪さがあったから。



―――確かに怖い……けど、なぜだろう…。


私はその声に吸い寄せられるようにフェンスにしがみついた。

無性に思うのだ。
向こうに行かなきゃ。アンダーサイカに行かなきゃ、って。