大体、こんな人気の無い寂れた地下街に、この世の欲望を叶えてくれる人がいるわけがない。
言い出したやつは漫画の読みすぎじゃないかと疑いたくなる。
「なんか盛り下がっちまったなぁ…。夏休みの研究課題も最初から練り直しかぁ。」
何も無いと思い知ると、急に恐怖は冷めるもの。
拓くんの残念そうな声を聞いて、私たちはもと来た道を引き返そうとした。
…けど、
「…あ、ごめん。
あたしちょっとトイレ行きたいかも…。」
潤ちゃんがおずおずと手を挙げた。今まで我慢してたらしい。
「はあ?上出るまで我慢できないのかよ?」
「ここ入って1時間よっ?
もームリ!限界!」
また口論が始まりそうなのを宥めて、私は辺りを照らしてみる。
駅の地下ならトイレの案内板くらいあるはずだ。



