「はぁ、はぁ、はぁ………。」 立ち止まり、息を整える。 動悸が激しいのは走ったせいだけではないだろう。 明かりは灯っているものの、引き戸がぴったり閉じられたままのそこに入るべきか迷った。 おかしな話だ。ここまでは、何も考えずに走って来られたのに。 「………はぁ、はぁ……。」 なかなか足を踏み出せない。 すると、 【邪魔ダ、通ルゾ。】 「え? ……おっと!」 足元を、黒い毛玉がサッと駆け抜けた。