いつの間にか彼は走っていた。
息が切れるほど走っているのに、笑みが止まらない。
胸が高鳴って、止まらない。
「…もうすぐ…、もうすぐです…!」
更に不思議なことは続く。
彼が床を踏むたび、近くの店に独りでに明かりが灯っていくのだ。
天井から垂れた照明もオレンジ色に光り、古めかしい字で「干物屋」や「家具屋」とだけ書かれただけの看板を照らしていく。
…そして明かりが灯った店からは、
「ああーっ、今日も一日の始まりかぁ!」
「よーし、商売、商売!」
「よぉ、おはようさん!」
各々の店の商売人達が現れ、通路に出たり他の店を覗いたりと次第に賑わっていった。
義也の足も更に速くなる。



