電車が開通した斎珂駅だが、かつての名所であった地下ショッピングモールはまだオープンしていない。
チラシでは近日オープンするらしいが、少なくとも今は部外者が入ることは許されないだろう。
…それなのに、フェンスが開いている。
「…無用心ですね。
子供が入ってしまったらどうするつもりなんでしょう。」
本当なら関係のない義也が、首を突っ込む理由なんてない。
もうすぐ電車も来る。
ショッピングモールのことは無視すればいい。
だが、
「………うーん……。」
気になって仕方がない。
野次馬根性なのか、ただの興味本位なのか。
とにかく強く惹かれるものがあったのだ。
そうして迷った挙げ句に、
「…あぁ、僕はなんてことを…。」
柄にもなく、義也は地下ショッピングモールにこっそりと入り込んでしまった。



