アンダーサイカ



「…ええ、それではまた。
もうすぐ電車の時間なので。」


名残惜しさは隠して、義也は通話を切った。

もう駅が目前に迫っていたからだ。


“南岸線・斎珂駅”。


長らく封鎖されていた斎珂駅が、つい最近になって復活したのだ。

電車も開通し、長年交通手段が自転車とバスに限られていたため、利用客が殺到。
今や町で一番賑わう場所となったのは言うまでもない。



義也も他の利用客と同じく電車に乗るために、改札へ急ぐ。


しかし、


「………おや?」


駅に入る直前、地下へ続く通路のフェンスが一箇所だけ外れていることに気がついた。