そこからがまた長かった。


いつ着くのかも分からず、嫌な浮遊感だけが続く。

1600階ぶんは超えただろうにエレベーターのスピードは衰えず、むしろ加速していった。


不安げに天井を見る。
つい10分前までいた地上がとても懐かしく思えた。

帰りたくない…と言ったら嘘になる。
でもそんな時はヨシヤの顔を思い浮かべて、耐える。



………やがて、


「!」


エレベーターの風音が弱まってきた。

同時に緩むスピード。
目的地が近いんだ。



「………もうすぐ…。」


もうすぐ会える。私をここへ導いたやつに。



“チンッ”


軽いベルを鳴らすと、エレベーターは何事もなかったかのように扉を開いた。