鋼の壁(フェンス)が、




「………え………?」




質素な、木の扉に変わった。




音もなく、気配もなく。
私が今さっき、手に血が滲むくらい叩いていたフェンスが、煉瓦色に塗られたこぢんまりとした木のドアに変わっていた。


ドアにはもちろんドアノブがついていて、それを捻ると、ドアは恐いくらいアッサリと入り口へと変化した。

ドアの中には、


「……エレベーター……?」


稔兄ちゃんと乗った、ひどく寂れたあのエレベーターがあった。

「これに乗れ」と。そう言われてるのは明らかだ。