煙の中から一歩、また一歩と進み出てきた稔兄ちゃんは、


「……ゲホッ、

…ぅぐ…、うぅぅ…う…。」


大きく、いびつに変形した真っ黒な両腕を使って、顔や胴体を守っていた。

それでも防ぎきれなかった弾が脚や脇腹をかすめていて、苦しそうな息遣いが聞こえてくる…。



「……くるしい…あつ、い……っ。あついよ…豊花…!」



「っ、稔兄ちゃん……!」


稔兄ちゃんは泣いていた。
苦しい、熱いと。

私は稔兄ちゃんの傍に駆け寄りたかった。駆け寄って、抱きしめたかった。

でもそれを、ヨシヤは許してはくれない。



「豊花ちゃん、お願いです。下がってください…。警備員さん達の近くへ。」


「…っ、で、でも…!
稔兄ちゃんきっと、もう襲い掛かってこないよ…!」



「…そうじゃありません。」