ヨシヤの視線が再び稔兄ちゃんに向く。


「5年前、人鬼として店の外に出て、初めて僕に顔を見せてくれた時のこと…覚えていますか?

“みせものをかる”。

…“みのる”の三文字を含ませたメッセージで、きみは僕に名前を教えてくれましたね。」


「……それが…何だって言うんだよ…ッ。」


焦りと同じくらいの苛立ちを見せる稔兄ちゃん。

ヨシヤは少し目線を下ろして、私の顔を見る。
今の彼は真顔なのに、いつもの張り付いた笑顔の時よりもどこか頼もしさ…みたいなものがあった。


「豊花ちゃんも教えてくれました。
僕に…僕なんかに、大切な名前を教えてくれた…。少しでも信頼を寄せてくれた…。

ミノルくんも、豊花ちゃんも…僕の大好きな、大切なひとです。」