「開店時間だ、薬屋。
さっさと店を開けろ。」



どん、どんと、閉め切られた引き戸が外から叩かれた。


荒々しい口調。
しかしさっきの黒い塊とは違う。人の声だ。



「…たっ…!」

助けて、と言おうとした。


でもそれより早く、ヨシヤが私の口を手で覆う。



ヨシヤはゆっくりと首を後ろに向けて、穏やかに答えた。


「はい、すみません。もうすぐ準備が整いますので。」


優しい声色と、強い手の力の差が違いすぎる。

もがけばよかったのに、私はなぜか声をひそめて体の動きを止めて、外にいる人の反応を待ってしまった。