アンダーサイカ



「昨日の時点ではこの子には目もくれなかったのに、都合のいい人ですね。

…ですが残念。今更連れて行こうとしても手遅れですよ。
僕はもうこの子の名を支配しましたから。」


ヨシヤはしたり顔だ。
相手のもっとも嫌がる部分を突いたように。

警備員さんは眉のシワを更に深く刻む。


「“商売人に名を支配された地上人は、連行の対象から外される”。
…一体どこで耳にした?警備員の決まりを。」


「地上人を公(おおやけ)に奴隷として使っている商売人なんていくらでもいるのに、警備員は誰も取り締まろうとしない…。
つまり、その場合は対象外になると考えるのが自然です。」


また警備員さんが憎々しい表情を浮かべる。
手にした銃剣をわざと音を立てて構え、その切っ先をヨシヤの首元に突き付けたのだ。