「…こ、この塩、ぜんぶ!?」
「ええ、そのために持って来てもらったんですよ。
大丈夫。包装自体は簡単な作業ですから。」
本当は私は、“こんな大量の塩を小分けにして運ぶほど店があるのか”って意味で驚いたんだけど。
でもよくよく見たらこの塩、凄い量…。
簡単な作業とは言え、包装だけで何時間かかるだろう。
とても今日だけじゃ終わらないことは目に見えていた。
「…終わるまでは手伝うけど、でも、こんなの配ってどうするの?
皆、誰かのお葬式に行くの?」
お清めの塩が必要な理由なんてそのくらいしか考えられない。
さっき配達員さんが言った通り、良くない霊(もの)をお家に入れないための…。
「近からずとも遠からず…です。これはね、」
そう切り出したヨシヤの答えはとてもシンプルで、
「アンダーサイカをうろつく、恐ろしい“鬼”を入れないためのお守りなんですよ。」
相変わらずの謎の発言は、得体の知れない怖さを含んでいた。



