最前列にいた塊が、ゆっくり頭をもたげた。
「っ!!」
思わず声が出そうになる。
だってそれは2メートル以上の高さがあって、…おまけにとてもグロテスクな潰れた顔をしていたから。
この世のものとは思えないおぞましい姿…。でも、男の人は平然と接している。
「僕は薬屋です。
行きの“電車”に酔った方がいらっしゃいましたら、酔い止めをお売りしますよ。」
「…?」
―――電車?何言ってるの…?斎珂駅にもう電車は止まらないのに…。
さっきから、私にはこの人の言うことが半分も理解できない。
でも塊たちには分かるみたい。潰れた顔の塊は、
【…ヒトツ………。】
くぐもった声でそう呟き、口にくわえた何かを男の人に差し出した。
「………?」
目を凝らす。
それは小さくて硬そうな、青銅みたいな色をしたプレートだった。



