男の人は何かに気づいたように声を低くする。
その間も、顔は笑ったまま…。
「…まあ、どんな理由があろうとそっちは駄目ですよ。
そろそろ“お客様”が到着される時間ですから。」
「……えっ…?」
男の人の不可解な言葉に、思わず足が止まる。
その直後、
「っ!?」
彼が“専用道”と言った道の向こうから、ぞぞぞ…と動くものがやって来るのが見えた。
いや、“やって来る”は間違い。
「何か…、這って来る…!!」
黒い塊がひとつ、ふたつ…。
いや、どんどん増えていく。
それが這うように専用道を、猛スピードで進んでくる。
「ひ…ッ!!!」
得体の知れない怖さで、私はとうとう腰を抜かしてしまった。
もう駄目、逃げられない…。



