いや、今気にしなきゃいけないのはそっちじゃない。 私は視線を男の人に戻す。 「?」 男の人は笑顔のままこっちを見てる。クッキーを差し出した態勢のまま動かない。 私はチラッとトイレのほうを見る。 拓くんと潤ちゃんはまだだ。 ―――私だけ…逃げちゃだめだよね…。 この男の人、…どこか“普通”じゃないもの。 「どうしました? ほら、どうぞ。 美味しいですよ。」 「……………。」 受け取っちゃだめだ。 だって、学校の先生も言ってた。 「…し、知らない人から物貰っちゃいけない…から…っ。」