薬を飲ませ、5秒と経たないうちに、
豊花ちゃんは店から…アンダーサイカから姿を消してしまいました。
「…そんなに苦いですかね、これ。」
使う機会は無いと思っていた紫色の薬。
だいぶ昔の調合書を参考にしたものなので、苦味は大して抑えられていないかも。だとしたら彼女には悪いことをしてしまいましたね。
僕は小瓶をポケットにしまうと、広げっぱなしの段ボールを、一旦見えないよう戸棚の中にしまいます。
…それから、
「…お客様。
まだお帰りになっていないのなら、少しお尋ねしても構いませんか?」
開けっ放しの引き戸に向かって、そう言い放ちます。
すると、思った通り。
【ユタカハ帰ッタノカ?
ツマラヌ。喚ビ戻セ。】
さっきまで豊花ちゃんと楽しげにお喋りなさっていたヒヨコサイズのお客様が、ひょっこりと顔を見せました。