「今日は初日で疲れたでしょう。ちょっと早いですが、お家にお帰りなさい。」


「え?もういいの?」


「もちろん。約束ですから。」



そう言うヨシヤの手には、昨日の紫色の液体が入った小瓶が握られていた。
私を一瞬で家に届けてしまった不思議な薬だ。

蓋を開け、また私の口元に近づける。


「…これ苦いから好きじゃない…。」

「文句言わない。すぐ慣れますよ。」


口開けるのを嫌がるなんて、歯医者さんに行った時以来だ。

でも私は6年生。苦い薬を嫌がるのはまだまだ子供だ。
だから勇気を出して、唇をちょっとだけ開く。

ヨシヤはすぐに、小瓶を唇に挿し入れてきた。



「今夜は来てくれてありがとうございました、豊花ちゃん。

でも夜の外出は危ないので、明日からはお家で待っててくださいね。
また僕がここへ“喚び寄せ”ますから。」


そっか。私がどこにいようが、ヨシヤの気分ひとつでアンダーサイカに入れるんだ。