アンダーサイカ



拓くんと潤ちゃんは肩を寄せ合って、真っ暗な通路をトイレ目指して歩いて行った。



私はと言うと、


「…斎珂薬局…。」


目印である薬局の看板を見上げて、何気なく呟く。



この斎珂駅がまだ利用されてた頃…。5年前だから、私が7歳の時か。

ここは最寄り駅だし、お父さんもお母さんも毎日電車通勤。
だからよく、地下街のケーキ屋さんや和菓子屋さんで、美味しいものを買って帰ってくれた。

歯磨き粉やうがい薬が切れると、近所のスーパーで買ったほうが安いのに、ポイントが貯まるからってお母さんはこの薬局に買いに来てたっけ。


「……5年…かぁ…。」


レジャーに行くよりも、私たち家族を繋いでいた地下街。

ぎりぎり東京の片田舎ながら、割と栄えてたほうなのに、なぜ急に閉鎖されたんだろう。
私には、都市伝説の真相よりそっちの理由のほうがずっと興味があった。