「おい、そこのお前。お前には参ったで。あの日姿を見られてから散々やったわ。リンに後で怒られると思うと恐ろしゅうて恐ろしゅうて、苦笑いで顔が固まったままになるわ。見られたお前らを追跡していたら今度は犬には追いかけられるわ。…全く」
猫はブツブツ言っている。

「あ!良いこと思いついた。じゃあさ、゛ハリー゛ってのはどう?張り付いてたでしょ、窓に」

「聞いとんのかい!…だからあれは犬に追いかけられて逃げ場がなくて仕方なくやな」

「ダメ?」

「まぁどうしてもっちゅうんなら呼ばせてやっても…ええけどな」

「本当は気に入ってるんでしょ」
ミサキが笑う。

「ば、馬鹿言うんやないわ」

「あはは、照れるな照れるな」
タロちゃんが猫の背中をポンポンと叩く。

「なんで照れるんじゃボケ」

「よろしくな、ハリー」
「よろしくね、ハリーちゃん」

「お、おう」

ハリーが照れ隠しなのか背を向けてまた毛繕いを始める。