「恭介、久しぶりだな」
ニコたちの背後から一人の男が現れた。

「…親父?こんなところで何をしているんだよ」
ニコは思考力が急速に落ちていくのを感じた。東花にいるはずの父が目の前にいる。過激な思想とは程遠く、愚直で保守的な父だ。

「お前も知っているように、お婆ちゃんは北の生まれだ。そして私も北の血をひいている。私はずっと憂いていたのだ。北の現状を変えたいと思って生きてきた。そしてこの組織を設立した」

「何を言っているんだ…よ」
ニコは自分でも信じられぬほど冷静さを失い、言葉を繋げないことに驚いた。

「現状、トーカタウンはラビィの製造工場や開発施設が多く侵攻の足掛かりとして最適だ。しかし、今回の一件でしばらくは厳戒体制が敷かれ、侵攻も遅れるだろう。その間に我々はクーデターを実行するつもりだ」

わからない。父がそんなことをする人間だとは全く想像ができなかった。今目の前にいるのは本当の父なのか。