ユズは、もしかしたら私が変に気にしないように、冗談でごまかしてくれたのだろうか。
 本当は、生理的現象だから仕方がないとはいえ、気まずかったのはユズの方だったろうに。

 しっかりしてると言われるし、大人びてると言われる私だけど、やっぱりユズは大人なんだなと実感した。



「んまっ」

 テーブルを挟んで、二人で朝ごはんを食べる。ユズはやっぱり美味しそうにご飯を平らげてくれる。
 と、ユズは真面目な顔をして話しかけてきた。

「杏奈、今日は午後から警察に行くからな」
「……うん」
「その前に俺は部屋に寄るから。杏奈はすぐに準備しろ」

 私はきょとんとする。

「なんで?」
「杏奈も俺の部屋に行くから」

 私はますますきょとんとする。ユズはむっとした顔を作った。

「杏奈は目を離すと、一人で警察に行く気がする」
「信用ないわね」
「信用はしてる。けど、杏奈はしっかりしすぎてる」

 ユズの言葉に、私はうなずいた。

「わかった。ここ片付けたら準備する」
「よしいい子だ」

 にこっと笑うユズ。
 私は、ユズに振り回されているような気がしてならなかった。
 そして、それがちっとも嫌じゃない自分が、おかしいと思った。