「それでしたら……」

 受付嬢はきょろきょろとフロアを見回して、フロアの一角を指した。

「久島弁護士は、あちらの休憩室にいらっしゃると思います」
「ありがとうございます」

 私は謝辞を述べて、受付嬢の指差した休憩室に向かった。休憩室の場所は二階と同じだけど、やはり雰囲気が随分違った。
 休憩室を覗くと、中には男性が二人、コーヒーを飲みながら談笑していた。
 一人は、どこかライオンを思わせるような豪胆な感じの人で、もう一人は精悍な、サーファーを思わせるような人だった。二人とも三十代半ばである。
 どちらが久島弁護士だろうと思いながら、遠慮がちに声をかけた。

「あの」

 声をかけた瞬間、二人同時にこちらを見た。
 その眼光があまりに強くて、私はびくりと身をすくませた。少し困惑しながら、私は茶封筒を示す。

「久島弁護士に書類をお持ちしました」
「ん? ああ、ありがとう」

 私の言葉に、ライオンの方がにっこり笑って立ち上がった。

「わざわざありがとう」

 にっこり笑って茶封筒を受け取った久島弁護士に、私は軽く一礼した。

「では失礼しました」
「ちょっと待って」

 そのまま休憩室を出ようとしたところを、サーファーの方に呼び止められる。
 なんだろうと振り返ると、二人ともにこにこしている。私は小首をかしげた。

「せっかくだから、休憩していきなよ」

 空いている椅子を指差して、久島弁護士が言う。
 これから仕事はないけれど、私は少し戸惑った。実はわりと人見知りをする方なのだ。

「話し相手になってくれよ。男二人じゃ寂しいんだよ」

 そう、サーファーの方が続ける。やはり躊躇われたけれど、断るのも失礼かと思い、私は小さくうなずいて空いていた席に座った。
 久島弁護士も続いて座って、私に笑いかけた。