「今日は休みでよかったな」
休日出勤も多い司法書士の仕事。
だけど、今はちょうど仕事が少ない時期だった。
でもそれをユズが知っているのは、なぜだろう。
「なんで、今日が休みだって知ってるんです?」
「今日が仕事なら、杏奈は飲みに行ったりしないだろう?」
何でも見透かされたような気分になるのは、初めてだ。
「ごめんなさい、ご迷惑をおかけして」
ぼそりと言う私に、ユズは気にしないといったふうに首を振った。
「杏奈がすっきりした顔になってよかった」
「……そうですか?」
「ああ、昨日よりはずっといい」
ユズの言葉に、私も微笑んだ。
「不思議な人ですね、ユズは」
私がぽつりと言うと、ユズは目を見張った。
「ちゃんとユズって呼んでる。偉い偉い」
そう言ってくしゃくしゃと私の頭をなでるユズ。
こんなふうにされると、まるで自分が子供に返ったような感覚になる。
「今日は、お仕事は?」
「ん? 昼から。まだ起きるのは早いな」
そう言ってごろんと寝転がるユズ。
「あの、私お手洗い借ります」
そう言って、私はそっとベッドから出ようとした。


