「……ただ、ぼうっとしていただけです」
「それで男に声かけられてたわけか」

 気まずくて、私は口をつぐむ。

 こうして近くで見ると、蓬弁護士は本当に格好いい。
 精悍さ、というか、そういうものが目に付く。
 自分に自信や誇りを持っている人だと、実感する。

「自分が美人だって自覚ある?」

 ただでさえ目立つんだからと呆れたように言われ、私は負けじと言い返した。

「蓬弁護士こそ、自分が格好良いんだって自覚はありますか?」

 私の切り返しに、蓬弁護士は面白そうに目を見張った。

「俺は知ってる」

 蓬弁護士の言葉に、私は笑った。

 今までの鬱蒼とした気分が嘘のようだ。
 蓬弁護士といると不思議と落ち着いた。

「私も知ってます」

 私がそう言うと、蓬弁護士も声を上げて笑った。

「蓬弁護士は、こんなところで何をなさっていたんですか?」

 同じ質問を繰り返してみる。

「この近くに車を停めてる。打ち合わせが終わったところを、通りかかった」

 その返答に私は驚いた。

「よく気づきましたね。一度しか話したことないのに」

 蓬弁護士は目を細めて微笑んだ。