マスカケ線に願いを


「ユズは良い奴だよ」
「……知ってます」
「杏奈ちゃんはまだ若いけど、しっかりしてるし。ユズのことを支えることを考えてもいいんじゃないか?」

 コウの言葉は、まるで結婚を示唆しているようで、私は反応に困る。

「それは……コウが言うことじゃないような気がするんですけど」
「まあ、確かにな」

 ははっと豪快に笑うコウの、真意がつかめない。

「ユズが、羨ましいよ」
「……え?」

 少しだけ、寂しそうに呟いたコウ。

「杏奈ちゃんみたいな素敵な女の子捕まえてさ……ああ、先越された」

 冗談めかして言うコウだけど、私は何か違和感を覚えた。

「コウ、もしかして独り身が寂しいんですか?」
「おっと、相変わらずズバッと言うな……」

 コウは苦笑する。

「妹がな、家を出たもんで……」
「やっぱり妹さん絡みですか」

 私がそう言うと、コウは寂しそうに笑った。

「ずっと一緒だったしな。小さい頃は俺が守ってきたようなもんだから。すっかりふてぶてしくなっちゃったけど」
「コウが、過保護だったのかもしれませんね」

 微笑むコウは、本当に寂しそうだった。

「うち、親父がいつも単身赴任で家にいなかったからさ、俺が父親代わりでもあったんだ」
「……寂しいですね」
「ほんと……」

 しばらく、静かな時間が流れる。