「えっ、でも、杏奈ちゃんも知ってるの?」
「ユズ、私にちゃんと断っていきましたから」

 私に隠していないから安心だというわけじゃない。
 私と正反対の彼女と一緒にいるという事実は、少し痛いんだ。

 平然として答える私に、コウも小夜さんも不満げに私を見た。

「杏奈ちゃん、平気なわけ?」
「杏奈ちゃん、そんな平気そうに振る舞わなくても……」

 そんなことを同時に言われた。私は肩をすくめた。

「ユズのこと、信じてますから」

 そう言ってから、私は少し考えた。

 ユズのことを信じているのなら、私はどうして不安になっているんだろう。
 信じているのなら、こんなに揺れるはずがない。
 私は、ユズのことを疑っているのかな。

 そんな私を見て、コウが顔をしかめた。

「杏奈ちゃん、俺じゃ頼りにならない?」
「え?」

 私は驚いてコウを見た。

「どういう意味ですか?」
「ユズには言えないこととか、相談したいこととかあったら、俺はいつでも聞くよ?」

 コウの言葉に、心が動かされそうになった。だけど、小夜さんを見てはっとした。
 小夜さんが、複雑な表情でコウを見ている。コウのほうは私を見ていてそれに気づいていない。

「そうだよ、私だって相談に乗るよ? 頼りないかもしれないけどさ」

 一転、小夜さんは笑顔を作ってそう言った。
 二人の気持ちは嬉しい。だけど、そう簡単に私は心を見せたくない。

「本当に大丈夫ですよ、ありがとうございます。さあ、早く食べましょうよ、お昼休み終わっちゃう」
「ん、ああ……」

 私が急かして、私達は食事をとり始めた。