お風呂から上がって、きちんとパジャマを着込んだ私はタオルで濡れた髪を押さえながら寝室に入った。
 スウェット姿のユズはベッドに寝転んで本を読んでいた。

「何読んでるの?」
「推理小説」

 ユズは読んでいた本を脇に置いて、ベッドの上で胡坐をかいた。

「こっち座って」
「ん?」
「髪乾かしてやる」

 私は笑って、ユズに言われたとおり座った。

「自分で出来るよ」
「そこをやってあげるってのが良いんじゃないか」

 くすくす笑いながらタオルで私の髪を乾かすユズ。

「やっぱりユズのほうが私のこと子供扱いしてる」
「子供じゃない。子猫だ」
「なにそれ」

 ある程度乾いたところで、ユズはタオルをハンガーにかけた。
 そして、後ろから私を抱きしめる。

「そんなことして、後で大変な思いしても知らないんだから」
「そうなったら、そうなっただ」

 不敵に笑うユズ。私はふと思い出す。

「携帯充電しなきゃ」
「あ、俺も」

 二人してのそのそと携帯と充電器を取り出す。と、メールの着信を知らせる光が点滅していた。
 確認してみると、沙理菜からだった。

『杏奈、この前は本当にごめんね! 明日時間あったら会おうよ。お詫びに奢る!』

 ……どうも、胡散臭い。

「どうした?」

 顔に出ていたのか、ユズが不思議そうに私を見た。

「いや、友達が明日会いたいって」

 私は充電器に携帯をつなぎながら、答えた。

「ふん? 会ってくればいいじゃないか」

 私はユズの隣に寝転ぶ。