「ユズっ」
「充電、充電」

 ユズはそう呟いて、再び私を抱きしめる。私は苦笑して、ユズを抱き返した。

「私も充電する」

 いつまでもやられっぱなしじゃいられない。
 ユズが面白そうに私を見た。

「一緒にお風呂入る?」

 耳元でそう囁いたユズに、私はにっこり微笑んで、

「入らない」

 と、言った。

「ちぇっ、つれないの……」
「第一私と一緒にお風呂入ったら、抑えられなくなるくせに」
「……それもそうだけど」

 ユズは名残惜しそうにごねる。

「ほら、お風呂入ってきて」
「はーい」

 ユズは渋々立ち上がる。私が先に入って、後から入ってこられた日には適わないから、ユズが先。
 ユズがタオルを持って浴室に向かったのを見送ると、私は寝室に向かった。その一角に置かれた私の洋服。

 泊まるには困らないだけの荷物は、ユズの部屋にそろえてあったし、ユズの荷物も私の家にそろえてあった。
 こうやって私のものがユズの黒い部屋に彩を与えているのが嬉しい。逆にユズのものが私の部屋にあると、いつもユズを近くに感じられた。

 本当は、ユズといつも一緒にいたいって思ってしまう。
 いつもいつも甘やかされたいって思ってしまう。

 だけど、ユズに迷惑がかかってしまうから、それは我慢だ。

「おい、杏奈、お風呂入って来い」
「あ、うん」

 腰にタオルを巻いただけのユズが部屋に入ってきて、私は顔をしかめた。

「風邪引くよ」
「そしたら杏奈が看病してくれるからいい」
「冗談言ってないで、さっさと服着なさい」
「ちぇ」

 笑いながらの私の言葉に、ユズは本当にふてくされる。

「杏奈と一緒にいると子ども扱いされている気分になる」
「あれ、ユズがそんなこというの? いつも私のこと子ども扱いするくせに」
「そうか?」

 私はべえっと舌を出して、さっさと浴室へと向かった。