今日は忙しいぞ!

颯太さんと一緒に住む事になったけど、必要最低限のものしかない。

まず、颯太さんの布団が必要でしょ?

それと食器。

とりあえずそれくらいかな?

洋服とかはコインロッカーに預けてあるって言ってたし。(魔法使いのところを出たときに預けたんだって。用意周到?)


その前に、腹ごしらえとゴン太の散歩だ!

「「いただきまーす!」」

二人揃ってパチンッと手を叩いて、ご飯を食べ始めた。

そういえば、男の人がご飯食べる前に手を合わせるのって、あんまり見たことがない。

あの人も、おじいちゃんも、「いただきます」なんて言わなかった。

そんなことを考えていたら、少し不安そうな顔をした颯太さんと目があった。


「…美味しくなかった?」

「ううん!全然!ただね、ご飯食べるときにいただきますって手を合わせる男の人、珍しいなーって思って。」

「手?」

「そう。手。」


颯太さんは恥ずかしそうに俯いて、ポツリと話してくれた。

「母さんがうるさかったんだ。命を頂くのに、黙って食べるのは失礼だって…」

お母さん……

俯く颯太さんの顔は小さな子供のようで、少しだけ胸がギュっとなる。


無条件に信頼して、愛してくれる。

厳しいことも言うけど、誰よりも子供のことを考える。

お母さんか……




そりゃ、そうだよね。

颯太さん、魔法使いの弟子だって言っても、人間だもんね。

お母さんから生まれたんだもん。

お母さんくらいいるよね。

「?朱里ちゃん?」

「何でもない!ちょっとビックリしちゃったの。魔法使いの弟子にもお母さんがいたんだーって。」


胸がギュっとなったこと、気がつかなかったことにしよう。

それよりご飯、ご飯。

食べたらゴン太と散歩に行かなきゃ!