「…――さん?」

あ…誰かが呼んでる……?
それに、すごく美味しそうな匂いもする……


今ね、すごくイヤな子になってたの…

人の事羨んで、僻んで…

スッゴいイヤな子になってたんだ……



「朱里さん?」

「…――?」

ゆっくりと目を開けると、そこには颯太さんの顔があった。


「泣いてたの?」

私の頬をそっと撫でるその手が、あんまりにも綺麗で…


「やっぱり悔しい!」



ゴンッ!




「「痛ーい!」」

いきなり体を起こしてしまい、おでことおでこがゴッツンコ!

お互いにおでこを押さえるはめになりました…


あー、恥ずかしい!




どうやら颯太さんの料理を待っている間、寝ちゃったみたい。

小さなテーブルの上には、二人分のカルボナーラ。

さっきのいい匂いはこれだったんだ。


「――?こんな材料、ありましたか?」

「あったよ。冷蔵庫の奥に。賞味期限切れそうなやつらが。」

「あったっけ?」

私は記憶の引き出しを探る。

料理ができないから、自炊はしない。

自炊はしないから、食材も買わない…はず……


あ、買った!

唯一できるベーコンエッグを作ろうと思って。

卵とベーコン買いました!

でも、生クリームはなかったような……?



「でた!また百面相!

あれだけお腹が鳴ってたんだから、先に食べよう?それからまた百面相して!」

「今、さらっと失礼なこと言わなかった?」


おでこを押さえていた手を離し、颯太さんは私をベッドから引き起こした。