もう、颯太の過去なんてどうでもいい。

颯太さえいてくれたら、私はきっと幸せなんだ。

颯太が笑っていてくれれば、私も笑っていられる。

颯太が好きだから……



「…――颯太…ありがと……幸せに……なろうね」



抱かれた腕に力がこもる。

こんな素敵なプロポーズ、きっとないね。


…私だって女だから、プロポーズには夢があった。

夜景の見える場所で…とか、誕生日に…とか。


だけど、そんなのどうでもいいんだ。

場所だって玄関先だし、指輪もないし、誕生日だって明日。

だけど、こんなに幸せなプロポーズ、どこ探したってきっとない。


「…――もう、どこにも行かないでね」

「行かないよ……行くところ、ないし……」

「きっと…ケンカするよ…」

「いいよ。いっぱいケンカしよう。で、何度も仲直りしよう……」




颯太がいれば、きっと幸せ……

ずっと……幸せ。





誰もいない玄関で、私たちはそっと唇を重ねた………