どれくらいそうやっていたんだろう?

ゴン太の頭は私の涙でベタベタになってる。

テーブルの上は朝食の残骸が乗ってる。


流しに持っていって洗わなきゃ……


そう思うのに、体が動かない。

颯太を失うかもしれない。

その恐怖が私を蝕む。

自分が傷つけたのに、それでも颯太を失いたくない。

でも、どうすれば……




「そうだ……」


お店に行けば颯太はいる。

許してもらえなくても、話をすることはできる。

そうよ!

とにかく、話をしなきゃ……



ゴン太の頭をベタベタにするほど泣いたせいか、体が重い。

だけど、颯太に会いたい気持ちが強くて……

無理矢理体を動かして、急いで着替える。

颯太。待ってて……

ちゃんと話がしたいんだ……





玄関を開けると、そこに颯太が立っていた。

走ってきたのか、息を切らして……

それでも、目の前に立つ颯太は笑っていた。

いつもの優しい笑顔で……


「…――どこか…行くの……?」

「颯太っ!」

目の前に颯太がいる。

いつもの優しい笑顔で、颯太が立ってる。

それが嬉しくて、謝るより先に颯太に抱きついた。


「…朱里?」

「ごめんね……ごめんね………」