いつものように落合さんのコーヒーを淹れ、僕はポツリポツリと話始めた。



最近ケンカが増えたことや、元カレとランチに行っていたこと、お互いに触れちゃいけないことに触れてしまったこと。


行きつ戻りつしながらの僕の話を、落合さんは真剣に、時に微笑みながら聞いてくれた。

ただ黙って聞いてくれる。

それだけで、何でだろう?

すごくスッキリした……


「…――颯太くんはさ、彼女のことが本当に好きなのね……」

「え……?」

「嫉妬、しちゃったくらいだもんね。本当に好きなのよ……。羨ましいわ。嫉妬するくらい好きになれるのって……」


落合さんの顔が、少しだけ悲しそうに曇った。


……確かに、朱里のことは好きだ。

過去だろうが、現在(いま)だろうが、他の男と会ってたなんて、やっぱり嫌だ。

でも、こんな僕が、あんなことをして来た僕が嫉妬するなんて、許されるのだろうか?


そんな僕の心を見透かしたように、落合さんは続ける。


「人には必ず過去があるの。その過去があって、今があるのよ。……だからね、過去を否定するってことは、今を否定するってこと。過去も全部を好きになってあげなきゃ……自分も、彼女も……」