「初めて食べさせてもらったのも、カルボナーラだったね」

お皿を受け取りながら言うと、颯太も懐かしそうに目を細めた。

「そういえば、そうだったね。……あのときは驚いたよ。女の子の冷蔵庫なのに、中が空っぽで」

「…それは言わないで……」

ベッドを背もたれに、テーブルも椅子もない部屋で食べるカルボナーラは美味しくて、懐かしい味がした。

「色々食べさせてもらったよね。カルボナーラもそうだけど、しょうが焼きとか、ワケわかんないものとか」

「あー!一発料理ね!自分でも作り方がわかんなくなっちゃってさー」


1年以上前のことなのに、昨日のことのように思い出せる。

颯太の作ってくれたご飯、一緒に行った商店街、初めてのデート。

すべてが鮮やかな色を伴って、私の前に現れる。

二人でいると、いつも笑ってた。

辛いことも、悲しいことも全部忘れることができた。

今はもう、辛いことも悲しいこともないけど、あのときのように二人で笑える。

きっと……ずっと……


「…――朱里?」

「……ん?」

「百面相するの、変わらないね」


楽しそうに笑う颯太を見てたら、怒る気にもなれなくなっちゃう。