子供の頃からそうだった。

僕の価値は顔だけ。

顔以外で望まれたことなんて、なかった。

僕の中身に、興味のある人なんていなかった。


また顔だけ望まれてる……



「奏さん……いや、母さん。あんたは何を望んでる?」

「私の望み?そうねぇ……息子としての颯太かしら。」

「ふざけるなっ!」

「あら?ふざけてないわよ。息子としての颯太を取り戻したいの。私のかわいい坊や。」


そう言って母さんは笑った。

僕が彼女に逆らわないことがわかっているかのように…


だけど、あの頃と違う。

彼女がすべてだった、子供と違う。


僕はもう大人で、母さんより大切なことがある。



だから……



「俺は戻らない」

「あら、残念。」

「……全然残念そうじゃない。」

「わかる?だって、親子だもの。」

「前にも言ったよな?どこの世界に、自分の息子を売り渡す親がいる?」


僕は母さんを睨んだけど


「あんたに凄まれたって、怖くないわよ。」

と、相手にされなかった。



「彼女、朱里ちゃんって言ったかしら?知ってるの?颯太が何をしてきたか。」

「あんたがさっき話しただろう?それと、俺の名前しか知らない。」


そう。名前しか知らない。

これでよかったのかもしれない。