それすら隠して朱里と生活していた。

それが、こんな風に終わるなんて、思ってもみなかった。



「……出ていって……」

そう朱里は言った。

言われて当然だよね。

あんな過去があるから……


もう僕に言えることはない。

ただ、唯一言えること……


それは

「ごめん……」

それだけ。


隠しててごめん。

こんな僕でごめん。


……好きになってくれて、ありがとう……



抱き締めた朱里の温もり、忘れないよ。

本当に……

本当に好きだったんだ。






僕は朱里の家を出た。

行くところなんて、どこにもない。

でも、もう朱里とも一緒にいられない。


「……これからどうしようかな?」

「…――捨てられた子犬みたいね。」

「――!」

振り返ると、そこには黒塗りの車から顔を出した奏さんが、妖艶に微笑んでいた。

「何してる?」

「話があるの。乗りなさい。」


僕を見つめる目が冷めている。

逆らうように目を伏せたけど、彼女から逃げ切れたことはない。

結局、無言のまま車に乗り込むしかなかった。



「素直でよろしいこと」


相変わらず冷めた目で僕を見つめる彼女は、昔と変わらない顔をしていた。