いつものように朱里と手を繋いでエントランスを出ると、目の前に黒塗りの高級車が止まっていた。


……どこかで………



スッと降りる窓から顔を見せたのは


「颯太。元気そうね」

「……奏………さん………」

もう何年も会っていない人が顔を見せた。


「ずいぶん会わない間に宗旨換えしたの?」

「な……何で…ここが……?」

「さぁ?何でかしら?」


そう言って笑う彼女の顔は、最後に会ったときのままで、僕は一気に過去に引きずり込まれる。

もう関係ないのに……。

奏さんも納得してたはずなのに……


ダメだ……

目の前が真っ暗になる。

息をするのも苦しい。


「颯太…?どなた?」


朱里の手にキュッと力が入る。

そうだ。僕はあの頃の僕じゃない。

今は違うんだ。



今は朱里がいる。

あの頃みたいに独りじゃない。





「まだ若いわね。でも、颯太といるってことは、それなりの人かしら?」


奏さんは朱里を値踏みするように眺めている。

「それなりの人って……?」

「言葉の通りよ。颯太を……」

「行こう!朱里!!」


僕は朱里の手を強く引いて歩き出した。




「颯太。あなたはまだ、私の“もの”よ。」


そう言って奏さんは笑った。

最後にあったときと同じように……