探してたのは、朱里じゃない……?

わっかんなーい!

まっ、いいか。誰探してても。

朱里のお父さんが乗り込んでこなきゃ。



「朱里ー、そろそろ買い物行く?」

「んー。ちょっと待ってて……」


ちらっと覗いたディスプレイには、黒々と文字が並んでいる。

もしや!

待ちに待った“千雪”復活?!


気になるー。

すごーく気になる。

早く読みたいな。

ずっと待ってたんだから!

読みたい!読みたい!読みたいよー!


「……千雪先生」

「――!覗かないで!」


勢いよく閉めたら、パソコンが壊れるよ。

壊れて困るの、僕じゃないけど。


「覗いてないよ。僕が朱里の嫌がること、したことある?」


そっと後ろから抱き締めると、こわばっていた肩からスッと力が抜ける。

「…したこと……ある……」

「何をした?」

「先生って呼んだ……」


あ、そこなんだ。嫌なことって。


「先生って言われるの、イヤ?」

「イヤ。」

「でも、先生じゃないの?作家先生。」


そっと朱里の髪に顔を埋めると、シャンプーの匂いが鼻を擽る。

このまま顔を埋めていたい。

でも、それは朱里が許してくれなかった。

勢いよく振り返ると


「私は作家先生じゃないもん!」


口を尖らせ、頬を膨らませて怒っていた。


その表情、スッゴク可愛い。


「…フグみたい」



チュッ



フグのような唇にキスをする。


…と、みるみる間に赤くなって…


「フグじゃないし……」


あーあ。俯いちゃった。