颯太たちが出ていった部屋は驚くほど静かで、私の鼓動だけが響く。



誰もいないって、こんなに寂しかったんだ。

いつもゴン太がいて、颯太がいて、食器の当たる音や、ゴン太の息づかいが聞こえてたのに……

今は何も聞こえない。

散歩に行っているだけだから、しばらくすれば帰ってくる。

ほんの少しの間だけなのに


「寂しい……」



今まで一人だったのに…。

ゴン太はいた。いたけど、ずっと一人だったのに……


颯太が来る前の生活が思い出せない。

私、一人で何をしていたんだろう?



もう思い出せない。

颯太のいない生活が想像つかなくなってる。

いつかまた、一人に戻るのに……



ずっと一緒にいたい……

でも、それを言っちゃいけない気がする。

言ってしまったら……



どうなるんだろう?

出ていっちゃうのかな?

“冗談やめてよ”って笑い飛ばされちゃうのかな?


颯太の気持ちがわからない。

私の事、どう思ってるんだろう?

知りたい……颯太がどう思ってるのか……


知りたい……



でも


「聞けないよなー」


この関係を、この生活を壊してまで知りたいとは思わない。

颯太が好き……


でも、言わない……

何かが変わるのがこわいから……


そんなことを考えながら、私はもう一度目を閉じた。