女の子って、こんなに軽いっけ?

背中にいる朱里ちゃんは、驚くほど食べる。

“少食”とは無縁の、本当によく食べる子。

それなのに、こんなに軽いなんて。



「朱里ちゃんは軽いねー」

「軽くない!」

「軽い…う、うわっ!」

「軽くないの~」

「わかった!わかったから、暴れないで!」


決して短くない足をブラブラさせて、背中で暴れてる。

駄々っ子みたいで、可愛い。


「…――颯太さん……」

「ん?」

「颯太さん…」

「はーい?」

「…颯太さんのバーカ!」

「――!何で!」

「バカだからバカなの~」


あーあ。完全に酔ってる。

まだ足をブラブラさせて、背中で“バカ”の連呼。


「はいはい。僕はバカですよ。」


バカと言いながら僕の肩に顔を埋める朱里ちゃんの、茶色く長い髪が僕の頬をくすぐる。


すげー…ドキドキする……


背中から伝わる朱里ちゃんの体温や鼓動、酒の匂いの中から微かに香る甘い香水の匂い。


…なんかヤバイかも……

僕も酔ってるみたい……



「…朱里ちゃん……?」

「……」


静かになった背中を振り返ると、朱里ちゃんは安心したような顔で、静な寝息をたてている。

僕はずり落ちそうな朱里ちゃんを背負い直すと


「…颯太って…呼んでほしいのに……」


そう呟いて、ゴン太の待つ家へ歩き出した。