サラリーマン風の男。

スーツを来て、トイレに向かった朱里ちゃんを目で追っていた。

ここは居酒屋。

スーツを来たサラリーマンなんて、結構いる。

朱里ちゃんを目で追ってたからって、一概に“怪しい”とは言い切れない。

だけど、やっぱり“怪しい”。

僕の中の警報器が鳴ってる気がする。



「…――大将。おあいそ。お釣りはいいや。」


僕はカウンターに1万円札を置いて、トイレの朱里ちゃんの元へ向かった。



「――朱里ちゃん?」

「何……」

「帰るよ」

「うん……」



個室から出てきた朱里ちゃんは、まだ赤い顔をして目を潤ませていたけど、もう「飲む!」とは言わなかった。

言われても、引きずって帰るつもりだったんだけど。



ベロベロのヨレヨレの朱里ちゃんを連れて外に出ると、空には星が瞬いていた。



「颯太さん…歩けなーい!」

「はー……しょうがないなー。ほらっ。」

「何ー?」

「おんぶ。家まで連れていってあげるから」

「ヤダー!」


歩けないと言いながら、おんぶを拒むなんて!

何てワガママな!


なんて思いながら、朱里ちゃんを背負う。


「えっ、かるッ!」


驚いた!

僕より頭1つ分低いくらいだから、160センチはあるはず。

だけど、この軽さは何?!