奈緒を引っ張ったのは彼氏の龍一くんだった。 「ちょっとコイツ借りるな」 そう言って龍一くんはズルズルと奈緒を引きずって行った。 「・・・・・・」 その場に残されたあたしはなんとも言えない空気に黙り込んだ。 すると、 「あの日、助けてくれてありがとうございました」 と、拓真が呟くように言った。 「え、あ、どういたしまして…」 「ほんとはあの時、勝とうと思えば殴ったりできたんですけど、やっぱ入学してすぐに問題はいやじゃないですか」 と、後頭部を掻きながら苦笑した。