あ、この人谷口秋斗だ。
そこそこかっこいいことで知られてる秋斗のことは、この時のあたしでも知っていた。
そして、毒舌で女にも容赦ないってことも。
「あ、いや、はい、まぁそんな感じです」
オドオドしながら答えるあたしに、秋斗は眉間にシワを寄せた。
何を言われるんだろうか。
こんな雨の日に傘を忘れるなんて馬鹿だとか思ってたりして。
そんな被害妄想じみた考えをして目を泳がせていると、
「貸してやる」
と、手に持っていた傘を差し出した。
「え、」
驚きのあまり秋斗が言ったことが信じられなくて固まるあたしに、
「俺は折りたたみ傘も持っている。だからさっさと受け取れ」

