その夜、俊ちゃんに抱かれた。


もしかしたら、何かを感じ取っていたのかもしれないけど。


その瞳の奥が、悲しそうに見えたから。



『…亜里沙…』



良いよ、俊ちゃん。


今日だけは、何もかもを許してあげる。


最後だから、嫌わないであげるよ。


だから、もっと嬉しそうな顔してよ、俊ちゃん。



触れるキスは、優しい気がした。


いつから俊ちゃんは、

こんなにもあたしのことを優しく抱いてくれるようになったんだろう。


何のために俊ちゃんは、あたしを抱いているんだろね。



苦しそうな顔しないでよ。


愛しく思ってしまうじゃない。



あたしの名前ばかり呼ばないでよ。


勘違いしてしまいそうになるじゃない。


3年の日々を、かけがえのないものだと勘違いしてしまいそうになるじゃない。




あぁ、そうか…


あたし多分、俊ちゃんのこと好きなんだ。


だったら余計にもぉ、一緒には居られないね。


それが俊ちゃんの望みだとするなら、思い通りになんかさせてあげない。


俊ちゃんの傍になんか、居てあげないよ。



一緒に果てた瞬間、込み上げてきたものに泣きそうになった。


だけど最後まで、俊ちゃんの前では泣かないよ。