俊ちゃんが買って来てくれたものを温め、一緒に食べたけど。


相変わらず怒ってるのかバツが悪いのか。


俊ちゃんはいつも通り、何も話そうとはしなかった。



「俊ちゃん。
リンゴ、剥がなくて良い?」


瞬間に、先ほどよりも一段とブスッとした顔になった俊ちゃん。


いじめてみるのも、たまには楽しいのかもしれない。



『…俺まだデータ整理終わってねぇし、後で部屋に持ってきて。』


あたしに背中を向けてそれだけ言った俊ちゃんに、

バレないようにと必死で笑いを堪えた。


昼下がりの穏やかさそのままに、きっとあたしは、少しだけ機嫌が良かったのだろう。


すっかり熱は下がったし、今は俊ちゃんに勝ってる気がしてるから。






―コンコン!

「俊ちゃん、入るよー。」


お皿に盛ったのは、何の変哲もない皮を剥いて切ったリンゴに、

爪楊枝を刺したもの。


うさぎちゃんにしてやろうかとも思ったけど、

これ以上怒らせるのも可哀想だと思ってやめておいた。


ガチャッとドアを押すと、カチャカチャとパソコンのキーの音が響く。


それに向かっている時の俊ちゃんは、いつも咥え煙草で。


話しかけても聞いてないことの方が多かった。



「ココに置いておくからね。」


そう一言だけ告げ、パソコンデスクとは別の、

低いガラステーブルの上にお皿を置いた。



『亜里沙。』


立ち去ろうとした時、背中を向けた俊ちゃんが、あたしの名前を呼んで。



『もーすぐ終わるから、そこ座ってて。』


相変わらずカチャカチャと不規則にキーの音を響かせながら、

俊ちゃんはそう言ったのだ。


てか、それ以前にパソコン触ってる時に話し掛けられたのだ。


驚いて思わず、その言葉の意味を探ってみたけど。


全然わかんなかった。