『…大我のこと、好きになってんの?』


「―――ッ!」


何を聞かれているのか、わからなかった。


そして何で、俊ちゃんがこんなにも弱々しい声を漏らすのかも。



「…好き、って言ったら?」


聞き返すあたしに、俊ちゃんからの答えはなくて。


いつもいつも俊ちゃんは、あたしにばかり答えを求める。



竹内も圭吾もダメなのに、大我さんなら良いの?


その“自由”さえも、俊ちゃんが制限するの?


あたしは俊ちゃんに、どうして欲しいんだろう。


俊ちゃんはあたしに、どうして欲しいんだろう。


ただ、息苦しくて堪らない。


あたしが大我さんのことなんか、好きなわけないじゃん。


それさえきっと、この人にはわからないのだろう。



「―――ッ!」


瞬間、体が反転した。


一瞬のうちに視界は天井のクリーム色が支配し、

体の四方を固めるように俊ちゃんの四肢が伸びる。


あたしを見下ろすその瞳の奥が、悲しそうな色をしている気がして。


戸惑うことしか出来なかった。



『…俺のこと…憎み続けるんだろ…?』



そうして欲しい、と。


言っているような気さえして。


あたしを捕らえて離さないその瞳に、目を逸らすことさえ出来なくて。


自分の心臓の鼓動が、耳にまで響くほどに大きく占める。


息遣いさえ忘れそうだったその沈黙は、一体どれほどの時間だっただろう。