結局一日の締めくくりなんて、こんなもんだ。


あたし達は別に、何かが変わったわけじゃない。


こんな場所に来たからって、何も変わらなかった。


まだ残る下腹部の痛みにあたしは、唇を噛み締めた。



「…気持ち悪っ…」


俊ちゃんに背中を向けた布団の中で、小さくなってそう呟く。


体は鉛みたいに重くて。


隣から香ってくる煙草の匂いに、息苦しさばかりを覚える。



『…亜里沙…?』


背中から、心配でもしてるような俊ちゃんの声。


正直、気が狂いそうになる。



「…大っ嫌いだから…。」


そう呟いた瞬間、肩を引かれて仰向けにさせられた。


見上げた先には、悲しそうな色を浮かべる俊ちゃんの瞳。


キスを落とした俊ちゃんは、あたしの頬を撫でるように右手を添えて。


煙草の味のする、優しいばかりのキス。


ゆっくりとその唇を離した俊ちゃんは、伏し目がちに口元を緩ませて。


そして左手に持っていた煙草を消した。


灰皿に伸ばした俊ちゃんの手に目線を向けるようにしてあたしは、

その瞳から逃げた。


卑怯なんだ。


きっと俊ちゃんは、こんな風にすればあたしが何も言えなくなるってわかってる。


わかっててわざと、こんな“優しさ”を向けるんだ。


顔を背けたままのあたしに俊ちゃんは、

先ほど自らが痛めつけた場所をまるで労るように、首筋から順にキスを落として。


涙が出そうになりあたしは、手の甲で顔を覆った。


また俊ちゃんのことが嫌いきれなくなる自分。


そんな自分が、一番嫌い。