『亜里沙。
亜里沙のことは好きだけど、俺と別れてくれないか?』


次の日、圭吾から振られてしまった。


理由は色々と並べられたけど、大してどれも覚えてない。


こんな、なんじゃそりゃなことを開口一番に言われたことだけは、一応覚えてるけど。


だけど本心ではきっと、あんな“兄”を持つことに、ビビっただけだと推測した。


本当に、最悪でしかない。


唯一あたしが少しだけ居心地が良かった人の隣まで、

俊ちゃんに奪われてしまったのだ。


上か下かで言えば、圭吾の方がまだマシだったのに。


結局、全てはあの人の思い通りになったんだ。


ついでにそれ以降、俊ちゃんの噂が尾ひれまでついて学校中を巡って。


あたしに交際を申し込んでくれる優しい人は、居なくなってしまった。


圭吾は圭吾で、さっさと新しい彼女と相変わらずの中庭でイチャついてるし。


おまけに圭吾と付き合っていたからあたしには、ロクな友達も居ない。


みんなみんな、あたしをイラつかせるばかりするんだ。



行くだけの学校。


帰ったら帰ったで、俊ちゃんの一挙手一投足にまで過敏に反応して。


これで全て、満足だとでも言いたいのだろうか。



それから入った夏休み。


高校生になって初めての夏休みだというのに、

相変わらずあたしは、家の中に篭りっきり。


変なことをして疑われて無理やりヤられるよりは、大人しくしていたかった。



迎えた初めての両親の命日は、俊ちゃんと別々にお墓に向かった。


あんな人と一緒に両親の前に立って、どんな顔をしろと言うのだろう。


去年までとは、まるで違う時間を過ごす。


この一年で、あたしは失うばかりした。


だからこれ以上もぉ、あたしには何もないんだ。


それが俊ちゃんの望みだったとしたら、やっぱりあの人は狂ってるのだと思った。